AviUtlを正しく理解する

AviUtlは無料の動画編集ソフトウェアとして人気が高く、利用者が多いソフトウェアですが、それ故に事前知識や基本操作を学ばずに使おうとして失敗する方が一定数居ますそんな人は「AviUtlは難しい、めんどくさい」と思い一生AviUtlを使うことがなくなるでしょう。また、AviUtlがどのように動作しているのかきちんと説明しないサイト・動画が乱立し、より混沌を極めてしまっているのが現在のAviUtlだと思います。そこで、このページでは、「AviUtlはどのようなソフトウェアか」から「AviUtlの真の力を発揮する」までを丁寧に解説します。失敗する経験をひとりでも減らせたら良いなと思います。

対象者

  • パソコン、デジタル動画、音声、画像に最低限の知識がある方
  • これからAviUtlを使ってみたい方
  • AviUtlを使ってみたけど、よく分からなくて挫折した方
  • より一層AviUtlを知ろうと思った方

AviUtlとは

AviUtlは、"AVIファイルに各種フィルタをかけるツール"(公式サイトから引用)です。AviUtlは、Windowsで扱う動画形式の「AVI」と英単語の「Utility」のふたつの言葉から名前が付けられています。無料で使えるソフトウェアで、誰でも利用することができます。長い間作者(=KENくん)によってソフトウェアの更新が行われていませんでしたが、2019年に作者が復帰し話題となりました。更新が再開しても大きな改修や機能追加が行われることはないと言われていますが、それでもなお多くの使用者が居て、無料で使える動画編集ソフトの事実上の標準となっています。

AviUtlは、初期状態ではAVI形式の動画の読み込みと保存と、カットや連結といった基本的な動画編集機能しか備わっていません。ではなぜ字幕付き動画やモーショングラフィックスといった高度な動画が制作されているのでしょうか? なぜならAviUtlはあとから機能を拡張することができるからです。

AviUtlは、あとから機能を拡張することができる「プラグイン」に対応しています。プラグインを導入することで、AviUtlの可能性は無限に広がります。

プラグインは、AviUtl本体と同じく無料でインターネット上で公開されているものが大多数です。プラグインには主に次のような種類があります。

  • プラグインフィルタ。動画の見た目を変化させるもの。これらのプラグインファイルには.auf(Filter)という拡張子がつきます。
  • 入力プラグイン。AviUtlで読み込める動画形式を増やすもの。.aui(Input)という拡張子がつきます。
  • 出力プラグイン。AviUtlで保存できる動画形式を増やすもの。.auo(Output)という拡張子がつきます。

AviUtl自体が備えている動画編集機能は、基本的なもののみです、しかし、有志の方が作成したプラグインを使うことで、より高度な動画を作成することができるんですね。

素のAviUtlを使う

まずは、AviUtlの理解をより一層深めるために、プラグインを使わずに素の状態のAviUtlを使ってみましょう。まずはAviUtl本体をダウンロードするために「AviUtlのお部屋」に移動します。「ダウンロード」欄に公開日順にバージョンが並んでいるので、最新版をダウンロードしましょう。執筆時点でのバージョンは1.10です。

ダウンロードしたファイルは圧縮されているので、ファイルを展開(解凍)してください。

(展開(解凍)ってなに? と思った方はまだこのソフトウェアを使うに値する知識をお持ちでないので、AviUtlの使用を諦めてください。その方が自分のためです。)←冗談抜きでこのレベルの人が結構いるのでインターネッツはおもしろいんですよね

そのあとaviutl.exeを起動するとAviUtlが起動します。灰色のウィンドウがひとつ表示されたらそれがAviUtlです。これがメインウィンドウであり、動画の編集内容が表示されます。

試しに動画を読み込んでみましょう。ですが、先ほど書いたように素のAviUtlでは読み込める動画の種類が少ないです。そこで、素のAviUtlでも読み込める動画を準備したのでこれをダウンロードして使ってください。

hello-aviutl.avi (9.75MB)

ちなみにこれはAviUtlで作っていません。

AviUtlのウィンドウにドラッグアンドドロップして動画ファイルを開くことができます。下部のトラックバーで時間を移動できます。

その他メニューのファイルの情報というところで、どのような動画ファイルを読み込んでいるか確認できます。

動画を切り抜きしてみよう

トラックバーの横にある4つのボタンで動画を切り抜いたり、前後のフレームに移動したりすることができます。AviUtlでは、最終的に動画ファイルとして保存するときに使用する時間の範囲のことを選択範囲といいます。選択範囲はウィンドウの下部にあるトラックバーの青い部分のことです。右側2つのボタンで始点と終点を選択して、選択範囲を変更することができます。すべてを選択範囲にするときは編集メニューのすべてのフレームを選択でできます。

試しに、開いたサンプル動画の切り抜きをしてみましょう。サンプル動画は登場→拡大→退場という動きをしますので、拡大中を選択範囲にします。できましたか?うまくできると、以下のような画像になるはずです。

うまくできたら、試しに動画ファイルとして保存してみましょう。ファイルメニューから、AVIファイルを保存をクリックして、保存先を指定します。保存ができたら、実際に動画プレイヤーソフトで開いて確認できます。

保存するときには、ビデオ圧縮、オーディオ圧縮のボタンで詳細に保存時の設定や、エンコーダーの変更ができます。

AviUtl本体には動画を連結したり、 画像を貼り付けたりする編集もできますがここでは説明しません。後述しますがそれよりも便利な機能があります。

フィルタを理解する

前節で、動画のカット作業ができるようになりました。つぎは、AviUtlに欠かせない、フィルタを使い動画を加工していきましょう。

フィルタ、プラグインフィルタは、説明したとおり"動画の見た目を変化させる"ものです。ウィンドウのフィルタメニューに使えるフィルタの一覧があります。とりあえず、色調補正フィルタを使ってみましょう。クリックしてフィルタをONにすることができます。するとメニューの色調補正フィルタにチェックマークがつきます。これはフィルタが有効かどうかを表します。

フィルタを有効にしましたが、画面上の変化はありません。なぜなら、フィルタの設定を変更していないからです。色調補正フィルタは、デフォルトの設定ではなにも変化が起きません。明るさ、コントラストなどの値を0から変化させることで、やっと動画の見た目が変わります。

フィルタの設定を変更するには、ウィンドウの設定メニューから行います。フィルタの名前と同じ「○○の設定」というのがあるはずなので、ここでは色調補正フィルタを設定するので色調補正フィルタの設定を開きます。

すると、小さなウィンドウが出現すると思います。これがフィルタの設定です。ここで自分が好きなようにフィルタの設定を変更することができます。また、右上のチェックボックスからフィルタの有効・無効が(フィルタメニューを使わずとも)直接変更できます。

次に、ぼかしフィルタを使ってみましょう。フィルタは複数重ねがけすることができるので、このままフィルタを追加することができます。設定メニューからぼかしフィルタを選択し、もうひとつウィンドウを表示します。右上のチェックボックスで実際にフィルタを有効にします。

これがフィルタです。説明が進むと使わなくなってしまいますが、AviUtlを理解するには大切な機能なので、ここで説明しています。

プロジェクトファイルを理解する

やっとAviUtlを使用して動画を編集することができました。ですが、これでは編集が完了するまでAviUtlを開きっぱなしにしておく必要があります。作業を保存するために何度も動画として書き出すのはPCのストレージ容量がもったいないです。編集の途中経過を保存するにはどうすれば良いのでしょうか。

ここで、プロジェクトファイルという仕組みが登場します。プロジェクトファイルは、現在開いている動画や、フィルタの設定、選択範囲など編集状況を保存することのできるファイルです。プロジェクトファイルを保存することで、何度も動画を保存せずとも途中で動画編集を中断することができます。

早速前節の動画編集の状態を保存してみましょう。ファイルメニューに、プロジェクトファイルの保存というものがあるのでそれをクリックして保存することができます。これはプロジェクトファイルであって、動画ファイルではありません。つまりこれを他人に渡しても意味がありませんし、その人は動画を観ることはできません。

AviUtlの画面を閉じて、もういちど起動してみましょう。もちろん、開いた動画や、設定したフィルタはすべて消えています。が、プロジェクトファイルを読み込むことによって、それがまた復活し作業を続けることができます。ファイルメニューに、プロジェクトファイルを開くというものがあるのでそれをクリックして保存したプロジェクトファイルを開きましょう。すると、保存する直前の状態に戻りました。これがプロジェクトファイルの使い方と意味です。

入力プラグインを理解する

いまのAviUtlでは、名前の通りAVIファイルしか読み込むことができません。世の中には.mp4や.wmvなど、様々なファイルフォーマット(コンテナ)の動画ファイルがありますが、それが読み込めないのは不便ですよね。

ここで、入力プラグインの登場です。AviUtlはAVIファイルしか読み込めませんが、何らかの入力プラグインをAviUtlに導入することで、AVIファイルではないファイルを読み込むことができます。AviUtlが読み込めない代わりに、入力プラグインが読み込んで、それをAviUtlが受け取る感じです。

入力プラグインはインターネット上にたくさん公開されていますが、もっとも人気が高く、汎用性があるのが「L-SMASH Works File Reader」でしょう。「とりあえずこれさえあればいい」と言われるほどのもので、大体の動画フォーマットをこれひとつで網羅します。

AviUtlは、「aviutl.exe」があるフォルダとおなじ場所、もしくは「aviutl.exe」があるフォルダにある「plugins」フォルダの中にあるファイルをプラグインとして認識します。置く場所はどちらでも構いませんが、どちらかに統一するべきでしょう。

プラグインのダウンロードが終わったら、AviUtlと同じく展開(解凍)をします。今回は入力プラグインのみ導入するので「lwinput.aui」をコピーします。

AviUtlを再起動すると、入力プラグインの追加が完了しているはずです、その他メニューから入力プラグイン情報をクリックして、L-SMASH worksがあるかどうかをチェックしてください、もしない場合、ファイルをコピーし忘れているか、ファイルを置く場所を間違えているかどうかです。

早速、動画を読み込んでみましょう、もちろんAVIファイルは読み込めますが、本当に他のファイルが読み込めるのか。もし動画ファイルを持っているのであればそれを使ってもらっても構いません。こちらで、先ほどのサンプル動画の別フォーマット版を用意したのでそれを使ってもOKです。

hello-aviutl.mp4 (1.37MB)

出力プラグインを理解する

今のAviUtlでは、読み込みと同じくAVIファイルしか保存することができません。このままでは不便ですし、AVIファイルは使い勝手が良くないので、できれば他の形式で保存したいものです。そこで、出力プラグインを使用します。入力プラグインの出力版……と思ってもらって大丈夫です。

出力プラグインもインターネット上にたくさん公開されていますが、最も使われているのが「x264guiEx」です。これを使用すると一般的なフォーマットで動画を出力してくれます。

このプラグインは大規模である故に、自動セットアップツールでAviUtlにインストールしてくれます。付属のx264guiEx_readme.txtにインストール方法が載っているので、それを観ながら、インストール作業を進めてください。

AviUtlを再起動すると、出力プラグインの追加が完了しているはずです、その他メニューから出力プラグイン情報をクリックして、x264guiExがあるかどうかをチェックしてください、もしない場合、何かしらファイルをコピーし忘れているか、ファイルを置く場所を間違えているかどうかです。

早速動画を保存してみましょう。先ほど保存したプロジェクトファイルをもういちど開いてもらっても構いません。出力プラグインを使って保存するには、ファイルメニューにあるプラグイン出力を選択します、するとプラグインメイと同じ名前の項目があるのでそれを選んでください。AVI出力時と変わらない画面になると思います。 あとは同じように出力するだけです。使う出力プラグインによっては、追加でウィンドウが出現することもありますが、基本的にはAVI動画ファイルの保存と何ら変わりはありません。

AVI動画ファイルの保存の時と同じく、ビデオ圧縮を押せば詳しく設定の変更ができますし、オーディオ圧縮のボタンを押せば音声の圧縮設定の変更ができます。

拡張編集を理解する

今まで、動画の連結や、フィルタの処理など、「より便利な機能があるから詳しく説明しない」と言ってきました。その「より便利な機能」というのが「拡張編集Plugin」です。AviUtlで作られた、イケてる動画はすべてこれを使って作られていると言っても過言ではありません。

このプラグインを導入すると、このプラグイン上での動画編集が作業の9割を占めると思います。それほど、AviUtlには欠かせないプラグインなのです。

もう一度「AviUtlのお部屋」に移動して、ページ中段にある「拡張編集Plugin」をダウンロードします。執筆時点でのバージョンは0.92です。出てきたファイルすべてをAviUtlのフォルダもしくはpluginsフォルダにコピーします。

その他メニューのプラグインフィルタ情報に拡張編集~~があれば導入に成功しています

設定メニューから拡張編集の設定をクリックすると小さなウィンドウが出てきます。これが拡張編集です。

AviUtl自体でできていた編集は、この拡張編集上ですべて実現することができますし、拡張編集ならではの図形描画や文字描画なども行えます。

出てきたウィンドウを右クリックして、「新規プロジェクトの作成」をクリックします。あとは作りたい動画の解像度とフレームレートを入力して、OKを押せばプロジェクトが作られます。これは拡張編集のプロジェクト、であって、AviUtlのプロジェクトファイルのことではありません

サンプルの動画の解像度が640x360、60fpsなので今回の例ではこの解像度でプロジェクトを作成します。

設定メニューに拡張編集の設定があるということは、つまり拡張編集は、単なるフィルタなのです。拡張編集上で動画を貼り付けたり、文字を描いたりしても、それはただの複雑なフィルタ、ということです。

拡張編集はフィルタなので、拡張編集上のプロジェクトは単なる拡張編集の設定です。拡張編集はフィルタなので、フィルタの設定はプロジェクトファイルに保存できます。ここまで説明すれば、拡張編集を使ったときの作業状況の保存の仕方も分かりますよね。

さて、拡張編集が使えるようになったので、タイムライン上に自由に動画や画像、文字や図形を置けるようになりました。これらをまとめて「オブジェクト」と呼びます。オブジェクトはそれぞれ長さや座標、拡大率などの情報を持ちます。

サンプル動画を拡張編集のウィンドウにドラッグアンドドロップしましょう。青い線が表示されると思います。これがオブジェクトです。オブジェクトの色は画像系(映像系)が青色で、音声系が赤色で、フィルタ系が緑色です。

拡張編集の横軸は時間を表します。縦軸はレイヤーといって、上から下の順番で描画されていきます。オブジェクトという概念を使って、視覚的に、直感的に動画編集を行えるのが拡張編集の強味です。

拡張編集のすべてを話すのは難しいですし、説明する気もありません。むしろ画像や動画をふんだんに使ったサイトの方が理解が簡単だと思います。

拡張編集に関しては他のサイトを参考にしてください。

むしろここからがAviUtlの真骨頂! という感じでありますが、筆者が伝えたかったのは大半のサイト、動画では説明されていない「どうやって拡張編集が動いたり、動画が読み込み・出力されたりしているのか」です。ちょっとでもAviUtlに対する理解度が増したのなら御の字です。

さいごに

説明書を読む

このページでは、基本的な事前知識などの説明が省かれています。だからこそ、説明書を読んでください。僕も制作サイドになってやっと分かりましたが、説明書を読まない人が多すぎます説明書を読めば解決することをわざわざ人に聞く人がこのAviUtl界隈にはたくさん居ますこのページを読んでいるあなたもそちら側の人間ではないと信じたいです

AviUtlには、aviutl.txtという説明書がありますし、拡張編集Pluginにもexedit.txtという説明書が付属しています。このページでダウンロードしたL-SMASH worksにも、x264guiExにも、説明書がついています。READMEとか、初めにお読みくださいとか、そういうファイルが説明書です。

特に、AviUtlと拡張編集Pluginの説明書は、これを暗記すれば大体のことができると言っても間違いないくらい機能の説明が網羅されています

だから、説明書は読みましょう

AviUtlは動画編集ソフトの最適解ではない

AviUtlは、無料で、かつ高機能な動画編集ソフトです。しかし、作りは10年前のものですし、積極的な更新が無いことも確定しています。ですから、いずれAviUtlを捨てるべきタイミングが来てしまいます。Windowsが互換性を大事にするOSだからこそ、今でも使えているわけです。

今のAviUtlには動画編集ソフトに必要な2つの機能が存在しません。ひとつめはやり直し。AviUtlはCtrl+Zで元に戻した内容をやり直すことができません。ふたつめは拡張編集のリップル削除。動画をカットし終えた部分を自動的に詰める機能です。これはほとんどの動画編集ソフトで使えますが、AviUtlでは使うことができません。リップル削除を頻繁に使うであろうゲーム実況者やYouTuberは、大きな負担となるでしょう。

だらかこそ、AviUtlは積極的に勧める動画編集ではないと筆者は思います。AviUtlは本来玄人向けのツールであったはずです。本来ならコーデックの知識やフィールドシフト、ビットレートやプロファイルについての知識もいるようなツールのはずです。もし、動画編集を楽しみたい!という方はまずは1万弱ほどで買える買い切り型の動画編集ソフトを使ってみてから、デジタル映像に関する知識を深め、それからAviUtlやVEGAS、Premiere Proなどを含む数多の選択肢から自分に合ったモノを選ぶべきだと思います。

個人的には、今からAviUtlを始めるのは今からC言語を学ぶ並に苦痛な気がします。すでに枯れた技術なので、情報がたくさんあるというメリットはありますが。