有機EL(OLED)ディスプレイは、基本的に液晶ディスプレイよりも画質が良いとされていますが、メリットだけではありません。このページでは、有機ELのペンタイル配列と、液晶のストライプ配列を実際に採用したスマートフォンを用いて、それぞれのディスプレイを比較します。
液晶ディスプレイのほとんどは、ストライプ配列という方式を採用していて、1ドットを構成するのは縦長な赤、緑、青の3つのサブピクセルです。縦長の3つのサブピクセルが合わさって、正方形の1ドットが作られます。もちろん、これらのサブピクセルは独立して存在しますが、人間が遠くからディスプレイを見ることで、3つのサブピクセルが混ざり、様々な色を表現することができます。
いっぽう、ペンタイル配列(PenTile)では、赤、緑、青の光の三原色を使用するという点ではストライプ配列と違いはありませんが、赤、青のサブピクセルに関しては、隣同士で共有します。つまり、赤-緑、青-緑……と並びます。
これでは、表現に使用できるサブピクセルの数が、ストライプ配列よりも減るので実際の解像度が落ちてしまいます。ですが、ディスプレイの高解像度化(高密度化)が進んだ今では、肉眼でこれらの配列を判別することは難しいです。続けて、ペンタイル配列とストライプ配列の比較と、どうして判別が難しいかの解説を行います。
文字表示の確認として、黒背景に白、赤、緑、青に塗りつぶされた「外郎売」を使用します。
ペンタイル配列のスマートフォンとして、OnePlus3を使用します。有機EL(OLED)の1080x1920の5.5inch、401ppiです。
※画像クリックで、オリジナル解像度を表示します。
このように、赤と青のサブピクセルの数が緑のサブピクセルの数と比較して少ないので、緑の文字がクッキリ表示されるのに対し、赤と青はギザギザしています。ペンタイル配列のディスプレイの欠点といえます。
ストライプ配列のスマートフォンとして、Xperia XZsを使用します。液晶の1080x1920の5.2inch、424ppiです。
※画像クリックで、オリジナル解像度を表示します。
こちらは、ストライプ配列なので、赤文字でも青文字でも、同じように表示されます。
同じ解像度、ほぼ同じ画素密度ですが、接写してみるとかなり見え方に違いがあります。
接写した画像だけ見れば、解像感的にはペンタイル配列よりストライプ配列……ですが、実際のところ、スマートフォンに使われるディスプレイにおいては、これらの配列の判別は肉眼では難しいです。何故でしょうか?(2度目)
人の目は、緑に敏感で、逆に赤と青に対しては鈍感です。なので、ペンタイル配列で赤と青のサブピクセルの数が減っても、そのことに気づかないということです。ペンタイル配列はその性質を利用して、ディスプレイのコストと、省電力性能を改善しています。
Appleは300ppi前後の画素密度を「ヒトの網膜の限界」とし、Retinaディスプレイと命名しました。つまり、実解像度で画素密度を計算したとしても、300ppi程度あれば、ヒト的には問題がないということです。
先ほどのOnePlus3(1080x1920/5.5inch/401ppi)でいえば、仮に長辺(1920px)がストライプ配列と比べ66.6%(1280px)のサブピクセルしかなくても、304ppiもの画素密度があります。
Galaxy Note10 Plus(1440x3040/6.8inch/498ppi)でも、同様の計算をして364ppiもの画素密度があります。
つまり、Appleの主張が正しければ、ペンタイル配列であってもある程度画素密度が高ければ、問題はないということです。
ペンタイル配列は、ヒトが体感できないレベルの最適化を行った、よく言えば無駄のない配列だといえます。
ペンタイル配列のいいところとして、
などがいえるとおもいます。逆に、悪いところとして
などが挙げれると思います……。
一般的にペンタイル配列は有機ELで採用されるので、解像感と発色の良さのトレードオフって感じでしょうか……スマートフォンにいち早く高解像度(WQHD)なディスプレイを使い始めたSamsungは、ペンタイル配列の性質を完全に理解したうえでの採用、なんでしょうね~。